2024年4月27日土曜日

出光美術館「復刻 開館記念展」2

本年は、皆様をこの展示室へお迎えする最後の1年となります。その幕開けを告げる本展は、58年前の開館記念展の出品作品と展示構成を意識しながら企画したものです。……開館記念展の会場を飾ったのは、仙厓(17501837)の書画、古唐津、中国の陶磁や青銅器、オリエントの美術でした。それらは、当館の創設者であり初代館長の出光佐三(18851981)が10代の頃から蒐集し愛蔵してきたもので、それぞれの作品がたたえる飾り気のない美しさは、いかにも佐三の感性にかなうものといえます。

本展では、開館記念展の内容をもとに作品を選び、当時の展示構成の部分的な再現を試みています。出光コレクションのエッセンスが凝縮された作品の数々を、いまなお開館当初の雰囲気を漂わせる展示環境のなかで、やはり当時のままに皇居外苑をのぞむロビーからの眺めとともに、何卒ご清鑑たまわりたく存じます。

 

2024年4月26日金曜日

出光美術館「復刻 開館記念展」1

 

出光美術館「出光美術館の軌跡 ここから、さきへⅠ 復刻 開館記念展 仙厓・古唐津・中国                          陶磁・オリエント」<519日まで>

 いよいよシリーズ企画展「出光美術館の軌跡 ここから、さきへ」の第1回「復刻 開館記念展 仙厓・古唐津・中国陶磁・オリエント」が始まりました。まずは仙厓和尚の指月大黒が表紙を飾るカタログから、館長・出光佐千子さんの「ごあいさつ」を一部引用することにしましょう。

出光美術館が帝劇ビルの9階に誕生したのは、昭和41年(1966)のことでした。それ以降、300を超える展覧会を開催し、数多くの方々のご来館を賜ってきましたが、帝劇ビルの立替計画にともない、令和6年(202412月をもって、しばらくの間、休館することになりました。

2024年4月25日木曜日

渡辺浩『日本思想史と現在』12

 

そのとき『君たちはどう生きるか』の対抗馬(!?)として挙げたのは、色川武大の『うらおもて人生録』(新潮文庫)でした。京都美術工芸大学にいたとき、『京都新聞』から求められて、就職試験に臨む受験生にエールを送るべくエッセーを寄稿したのですが、本書から「九勝六敗を狙え」を引用したので、よく覚えていたんです。そのあと鷲田清一さんが、「折々のことば」に僕と同じくこの「九勝六敗を狙え」を選んでいたのでチョッと驚きましたが……。

『うらおもて人生録』の解説は西部邁すすむ先生でした。両書を象徴するような解説者のコントラストが実におもしろかったのですが、丸山真男先生と西部邁先生を一緒にしたら、やはり怒られちゃうかな(!?

 *「饒舌館長ブログ」では、鬼籍に入られた方のみ「先生」とし、お元気な方はひとしなみに「さん」でお呼びしています。渡辺浩さん、お許しください。


2024年4月24日水曜日

渡辺浩『日本思想史と現在』11

渡辺浩さんの著作を拝読すると、恩師・丸山真男先生に対する尊崇の念が行間からも感じられます。スチューデント・エヴァリュエーション――学生による先生評価も世の流れですから致し方ないと思いますが、学問における師弟とはこうありたいものだと、襟を正したくなります。

丸山真男先生といえば、30年前、拙論「日中の自然と山水画」を書いたとき、先生の「近世日本政治思想における『自然』と『作為』」を引用させていただいたことが思い出されます。「饒舌館長ブログ」では、吉野源三郎『君たちはどう生きるか』(岩波文庫)をアップしたとき、その解説が丸山真男先生であることを紹介したことがあります。

 

2024年4月23日火曜日

渡辺浩『日本思想史と現在』10

 

『近世日本社会と宋学』は研究書ですから、やや手ごわい感じを免れません。それはチョッと……と躊躇する向きには、『日本政治思想史 十七~十九世紀』(東京大学出版会 2010年)の方をおススメしましょう。

渡辺浩さんがあとがきに、「本書は、この主題に関心はあるがその専門の研究者ではない、その意味で『一般』の読者のために、十七・十八・十九世紀の簡略な通史を提供することをめざして書いた」と述べるとおりの一書ですから……。それでも476ページありますから、これまた拾い読みから始めて一向にかまわないと思います。


2024年4月22日月曜日

NHK日曜美術館「富岡鉄斎」

 

NHK日曜美術館「老いるほどに輝く~最後の文人画家・富岡鉄斎~」4月28日 9:00~

 京都国立近代美術館で「没後100年 富岡鉄斎」展が始まりました。これに合わせNHK日曜美術館で上記のごとき放映があります。饒舌館長もチョット老顔を出すはずです(⁉) 

渡辺浩『日本思想史と現在』9

 

本書を読んで「思想史はこんなに面白い!」と感じたら、渡辺浩さんのデビュー研究書『近世日本社会と宋学』(東京大学出版会 1960年)に挑戦してみたらいかがでしょうか。これがあって初めて、『日本思想史と現在』のような本が書けるんだと腑に落ちることでしょう。

僕にとっては、それまでの単純な朱子学の日本展開論を根底から突き崩してくれた一書でした。それとともに、渡辺さんの朱子学展開論と我が文人画の私的理解との間に、パラレルな関係が成立するように思われて、とてもうれしくなったことを思い出します。


出光美術館「復刻 開館記念展」2

本年は、皆様をこの展示室へお迎えする最後の 1 年となります。その幕開けを告げる本展は、 58 年前の開館記念展の出品作品と展示構成を意識しながら企画したものです。……開館記念展の会場を飾ったのは、仙厓( 1750 - 1837 )の書画、古唐津、中国の陶磁や青銅器、オリエントの...