2017年7月3日月曜日

奇美美術館「おもてなし」2


許文龍さんは立志伝中の方です。先の美術館案内にもあるとおり、プラスチック工業ですぐれた成功を収められましたが、少年のころの夢捨てがたく、奇美グループ創業者として私財を投げ打ち、この素晴らしい奇美美術館をオープンさせたのです。長年にわたり、三菱商事およびグループはその事業のお手伝いをさせてもらってきました。

しかし今回、許文龍さんと静嘉堂文庫美術館代表理事である佐々木幹夫さんとの交流振りを拝見するに及んで、単なるビジネス・パートナーではなく、厚い信頼関係によって結ばれていることを知りました。だからこそ、許文龍さんはこの奇美美術館の建設に対する三菱からの寄付をお断りになったのでしょう。それを知って僕は、許文龍さんに対する尊敬の念がいや増すのを覚えました。

幼いころから芸術という真善美の世界に憧れた許文龍さんは、実業家の前に芸術家であったようにも感じられました。事実、バイオリンの腕前はプロ並みであり、許文龍ルームに飾られた油絵の絵画的完成度もとても高いものでした。

その多くはコレクションの模写的作品でしたが、若いころ描かれた「樹林――イメージ」とでも名づけたいような小品は、もって生まれた造形的才能を遺憾なく発揮した作品として深く心に刻まれました。

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