2017年8月3日木曜日

静嘉堂文庫美術館「私の好きな茶道具ベスト10」6<長次郎 紙屋黒>2


今秋、九州国立博物館では久々にものすごい桃山美術展が開かれますが、この「紙屋黒」が錦上花を添えることになれば……と願わずにはいられません。先日、伊藤館長がわざわざ静嘉堂までいらして下さったのですが、「これなくして九博じゃ桃山展は絶対開けませんよ」という言葉を聞いて、とても名誉なこととうれしく思ったものでした。

「桃山美術はルネッサンスじゃない! バロックだ!!」というのが私見です。「紙屋黒」を見ると、胴の中央部を意識的に凹ました造形はバロックそのもの、ルネッサンス的古典主義の対極に位置しています。焼き物におけるバロック的変化には、作為的なものと、無作為のものがあると思いますが、「紙屋黒」となるとかなり作為的なものではないでしょうか。窯のなかで変形したとみるには無理があります。

しかしちょっと自信がなかったので、おしゃべりトークの席で赤沼さんに訊いたところ、やはりこれは作為的なものであるというお墨つきをもらいました。他の長次郎よりもさらに一層バロック的作為が強まっているのは、新奇を好む秀吉の美意識を忖度した結果かもしれません!?

0 件のコメント:

コメントを投稿

ブータン博士花見会4

  とくによく知られているのは「太白」里帰りの物語です。日本では絶滅していた幻のサクラ「太白」の穂木 ほぎ ――接木するための小枝を、イングラムは失敗を何度も重ねながら、ついにわが国へ送り届けてくれたのです。 しかし戦後、ふたたび「染井吉野植栽バブル」が起こりました。全国の自...