2017年9月2日土曜日

河治和香『伊藤若冲』


河治和香『遊戯神通 伊藤若冲』(小学館 2016年)

 河治さんの略歴に、「三谷一馬氏に師事して、江戸風俗を学ぶ」とあったので、とても懐かしい気持ちになりました。『江戸吉原図絵』など、三谷先生のご本にはずいぶんお世話になったからです。河治さんは若冲を主人公にした映画の企画が発端となって、この小説を書くことになったそうです。

腰巻には<「おまえは、京の女やな」足を拭きながら、若冲はそう言って美以をみた。「……え」「底冷えがする」>という、浪漫的一節がアップされています。「時空を超えて我々を魅了し続ける作品とそれを描いた絵師に、江戸と明治、二つの時代から迫った描き下ろし小説」ともあります。

そこに狩野博幸さんの「古い文献に「寂中」と誤記したものがある。華麗な若冲の絵の背後に潜む人間たちの底知れぬ寂しさを、著者は追う」という、いかにも狩野さんらしいキャッチコピーが加えられています。

僕も楽しく読了しましたが、腰巻のシーンなど、やはり映画で見たかったなぁという気持ちをぬぐえませんでした。もしこの本が映画化されたら、必ず拝見させてもらい、マイ批評を「饒舌館長」にアップすることにしましょう。何といっても、映画『天心』の批評を書いて、笑われちゃったこともある僕ですから(!?)

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