2017年9月19日火曜日

東京都美術館「ボストン美術館の至宝展」5



 幕末には江戸の芝にあった青松寺という寺の塔頭、吟窓院の寺宝であったことが、これまた墨書銘によって明らかになるのですが、その後この塔頭を出て、アーネスト・フェノロサらによりボストン美術館のコレクションとされたのでしょう。


この「仏涅槃図」の軸頭も見所の一つです。町彫りの開祖として尊敬を集め、当時の彫金界で高い人気を誇った横谷宗珉が、その先端に唐獅子を彫って、サインと一種のモノグラムである花押を加えているからです。下絵は一蝶によるものと見て間違いなく、二人のコラボ作品だといってもよいでしょう。


今回の至宝展では、展示ケースの横に小窓を作って脇から照明を当て、この彫り物がよく見えるように工夫されています。展覧会に足を運んだ方は、忘れずに見てきてくださいね。


伝統に飽き足らず、その枠外に飛び出したという点で、一蝶と宗珉はよく似ていたせいでしょうか、無二の親友でした。一蝶が島流しにあっていた間、お母さんの妙寿を世話していたのは宗珉だったそうです。

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