2017年10月27日金曜日

サントリー美術館「狩野元信」5


それはともかく、イコノクラスムは偶像破壊運動と訳されることが一般的だが、もしこれを広く偶像否定主義と考えるならば、日蓮にはイコノクラスム的志向があったというべきであろう。

実証は難しく、日蓮宗寺院を訪ねたときの直感に過ぎないのだが、奈良の華厳宗や法相宗、あるいは京都の浄土宗や真言宗の寺院と比べ、安置される仏像の美術的価値において、やや及ばないところがあるというのが、偽らざる感想だからである。すでに指摘されるように、イスラム教にもイコノクラスム的志向が強いのだが、彼我比較して実に興味深く感じられるのである。

平成15年(2003)早春、特別展「立教開宗750年記念 大日蓮展」が東京国立博物館で開催された。そのとき求めたカタログが手元にある。試みに開いてみると、10点の仏像彫刻が紹介されているが、重要文化財に指定されているのは、延文3年(1358)銘を有する岡山・妙圀寺所蔵の康俊作「釈迦如来坐像」のみである。

0 件のコメント:

コメントを投稿

渡辺浩『日本思想史と現在』7

しかし渡辺浩さんは、先行研究が指摘した二つの点について、高橋博巳さんの見解が示されていないことが、やや残念だとしています。その先行研究というのは、大森映子さんの『お家相続 大名家の苦闘』(角川選書)と島尾新さんの『水墨画入門』(岩波新書)です。 僕も読んだ『お家相続 大名家の苦闘...