2018年1月29日月曜日

静嘉堂文庫美術館「歌川国貞展」8


もちろん、このような西洋美術史の様式を用いて、それとの共通性を求めようとするときは、多くの陥穽が待ち構えています。西洋の概念を、安易に東洋に当てはめるべきではないという警告も発せられています。そもそも、そんな実証には何の意味のないという醒めた意見もあります。

しかし、物事の類縁性を探すことは、区別や分類とともに精神的快楽であり、人間が大昔からやってきたことなのです。そして表面的な、あるいは現象的な相似性の背後に、影響関係や共通原理が見出されるとすれば、そこには重大な意味が存在することになります。実を言うと、ヨーロッパにおけるマニエリスム論の展開は、このような類縁性発見の旅だったように思われるのです。

国貞にとって最良のマニエラは師であった初代豊国でした。すべてのマニエラは、初代豊国が用意してくれていたのです。ところで、国貞最高の美人画として人口に膾炙するのは、「星の霜当世風俗」シリーズの「行灯」です。


0 件のコメント:

コメントを投稿

渡辺浩『日本思想史と現在』12

  そのとき『君たちはどう生きるか』の対抗馬 (!?) として挙げたのは、色川武大の『うらおもて人生録』(新潮文庫)でした。京都美術工芸大学にいたとき、『京都新聞』から求められて、就職試験に臨む受験生にエールを送るべくエッセーを寄稿したのですが、本書から「九勝六敗を狙え」を引用し...