それとともに、山口百恵が恐怖を覚えた理由が分かるような気がしました。「自分の意識の中での私自身は、あの街にいる。あの坂道を駆け、海を見つめ、あの街角を歩いている。私の原点は、あの街――横須賀」と絶唱する山口百恵にとって、絶対見たくはなかったはずの横須賀が、そこに繰り広げられているからです。
しかし、もし山口百恵が写真集ではなく、このヴィンテージプリントを見たとしたら、表層を超えた写真としてのエネルギーに、ちょっと、あるいはまったく異なる感慨をもったかもしれません。少なくとも、現在、幸せな家庭生活を営む山口百恵なら、40年もまえ石内都によって写し撮られた横須賀に、もう哀しみも怖れも感じることはないでしょう。
山口百恵様、ぜひ3月4日までに、横浜美術館をお訪ねくださいませ!!
「石内都 肌理と写真」から選ぶ「僕の一点」は、「Apartment」№004のパジャマを着て布団の上に横座りする男のポートレートです。なぜかって? 男のうしろの壁に、篠山紀信が撮影した山口百恵の大きなピンナップが、無造作に画鋲で止めてあるからです(!?)
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