2018年5月3日木曜日

根津美術館「光琳と乾山」1


根津美術館「光琳と乾山 芸術家兄弟 響き合う美意識」<513日まで>(428日)

 
 根津美術館キューレーター野口剛さんが企画した、ゴールデンウィークにオススメの特別展です。副題にあるとおり、天才的兄弟の響きあう美意識が自然と感得されるように、とてもうまく作品が選択され、構成されています。

3年前、琳派に関する拙文を集めて『琳派』を出したとき、「響きあう美」という副題をつけました。琳派絵師の美意識は、おたがいによく響きあうものでしたが、光琳と乾山における交響がもっとも顕著であったことは、改めていうまでもありません。この特別展に、静嘉堂文庫美術館が誇る光琳筆「鵜飼図」が選ばれたことも、じつにうれしいことでした。

しかし、この特別展の素晴らしさは、それだけじゃありません。野口さんの研究成果が、ちゃんと反映されていることなんです。この構成自体が成果ですが、研究的立場からいうと、始興素信同一人説が実証されたことが特筆されます。根津美術館所蔵の乾山作「銹絵蘭図角皿」の裏には、「表の一連は画師である渡辺素信が私に代わって書いた」という意味のことが、乾山の字で書かれています。

0 件のコメント:

コメントを投稿

渡辺浩『日本思想史と現在』11

渡辺浩さんの著作を拝読すると、恩師・丸山真男先生に対する尊崇の念が行間からも感じられます。スチューデント・エヴァリュエーション――学生による先生評価も世の流れですから致し方ないと思いますが、学問における師弟とはこうありたいものだと、襟を正したくなります。 丸山真男先生といえば、 ...