2018年5月5日土曜日

根津美術館「光琳と乾山」2


これまで素信なる画家が描いたのは、もっぱら蘭の絵であると考えられてきましたし、もちろん僕もそう思ってきました。これを最初に指摘した相見香雨先生は、この素信が渡辺始興である可能性が強いことを指摘しましたが、実証にはいたりませんでした。

ところが野口さんは、この「一連」というのが絵ではなく、表に書かれた五言二句の「一聯」であることを見抜き、いまは失われてしまった始興筆「山水図」の自賛と比較することによって、可能性に止まっていた始興素信同一人説をついに証明したのです。琳派研究史上の快挙です!! 

もちろん、こういうことにあまり関心のない方は、光琳の「燕子花図屏風」と乾山の「銹絵染付金彩絵替土器皿」という、根津美術館がほこる天才兄弟の二大名品に酔いしれるだけで、至福の一時を楽しむことができるでしょう。それはそれで、すばらしい美術鑑賞です。

0 件のコメント:

コメントを投稿

渡辺浩『日本思想史と現在』8

  渡辺浩さんの『日本思想史と現在』というタイトルはチョッと取つきにくいかもしれませんが、読み始めればそんなことはありません。先にあげた「国号考」の目から鱗、「 John Mountpaddy 先生はどこに」のユーモア、丸山真男先生のギョッとするような言葉「学問は野暮なものです」...